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Context Grammar文脈を読むAIをデザインする

Context Grammar · Stage 1

Intent:その場にある、かなえたいこと。

よい手助けは、かなえたいことについて三つを分けて考えます。どうやって気づいたか、どこまで固まっているか、どの高さで語られているか。その願いは一瞬のこともあれば、一年がかりのこともあります。

「こうしてほしい」に、どう気づく?

音声:英語

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Intent

よい店員は、注文を聞くだけではありません。まだ選んでいるのか、おすすめを聞きたいのか、もう決まったのか。その様子にも気を配ります。Intentは、その人がかなえたいこと。AIが勝手に決めずに、その意図に気づくにはどうすればよいのでしょう。

Two different questions

二つの料理を何度も見比べていたら、店員は迷っていることに気づくでしょう。でも、どちらかに決めたとは限りません。「何を手がかりに気づいたか」と「気持ちはどのくらい決まっているか」は別の話です。「違いをご説明しましょうか」と声をかける。「こちらを注文しておきました」とはしません。

Four ways to notice

Context Grammarでは、意図に気づく手がかりを四つに分けます。自分から伝えるExplicit。いまの行動から気づくActive Implicit。ふだんの習慣から気づくPassive Implicit。そして周りの変化から気づくAmbient Implicit。これは気づき方の分類で、勝手に動いてよい度合いではありません。一つずつ見ていきましょう。

01 · Explicit

一つ目はExplicit。自分から伝えることです。「軽めのものを。30分後には出たいんです」と店員に頼む。AIなら「息子の体育用の靴を探して」と話しかける。声でも文字でも、意識して選ぶ操作でも、意図は直接伝えられます。ただし、おすすめを頼んだからといって、購入まで任せたわけではありません。

02 · Active Implicit

二つ目はActive Implicit。いまの行動が手がかりになります。店員を呼ばなくても、二つの料理を見比べている姿から迷いが伝わる。画面なら、同じサイズ表を何度も開いている。AIは比較を手伝えます。でも、迷っていることを同意と受け取ったり、見ている商品を買いたいと決めつけたりはしません。

03 · Passive Implicit

三つ目はPassive Implicit。ふだんの習慣が手がかりです。家族で通う店なら、小皿をいくつか分け合うのが好きだと覚えていてくれる。AIも、共有してよいと決めた情報から、家族が喜んだ料理を思い出せます。「いつもの料理にしますか。今日は少し変えますか」。習慣は会話の出発点であって、その人を決めつける材料ではありません。

04 · Ambient Implicit

四つ目はAmbient Implicit。周囲の変化が手がかりです。雨が降り始めてテラスが使えなくなれば、店員は室内の席を提案する。AIなら、共有した予定に電車の遅延が影響すると気づき、別の経路を提案する。こちらが新しく頼まなくても、状況から気づけます。予定を実際に変更してよいかは、別に決めておきます。

Noticing is not deciding

この違いを、日常の場面で考えてみましょう。子どもが「靴がきつい」と言った。AIに探してと頼むことも、自分でサイズ表を見始めることもあります。AIは何を手がかりに助けが必要だと気づいたのか。そして、こちらの気持ちはどこまで決まっているのか。気づき方と、決めるまでの段階は分けて考えます。

From a possibility to a decision

気持ちが決まるまでにも段階があります。まだ思いついていないLatent。可能性を探しているExploratory。候補を比べるDeliberating。そして、望むことが決まったConfirmed。助け方も変わります。さりげなく提案する。自由に探せるようにする。違いを見やすくする。最後は、本人が選んだ行動を確認する。

A possibility you had not considered

まだ思いついていない可能性が、人との距離を縮めることもあります。お父さんと子どもたちは同じ漫画が好き。でも、お父さんはアニメの主題歌を知らない。家族がその好みを共有してよいと決めていれば、AIが「子どもたちが好きな曲、聴いてみますか」と声をかける。お父さんが「聴いてみよう」と答え、一緒に聴くきっかけが生まれます。予測どおりに動かすのではなく、つながる機会を増やすのです。

Two questions, better support

この二つの問いを、簡略図で整理します。分類全体を示す図ではありません。横は、自分から伝えたか、AIが手がかりを見つけたか。縦は、まだ考えているか、もう決まったか。「おすすめは?」と声に出しても、まだ探している段階です。逆に、メニューを閉じた姿は、決まった合図かもしれない。でも、観察したことも確信があることも、許可の代わりにはなりません。この二つを分ければ、早とちりを防げます。

Notice. Ask. Understand together.

いつもの店で「今日は違うものがいいな」と言う。店員は、いつもの料理をそのまま出しません。どんな気分か聞き、選ぶのを手伝ってくれる。AIにも、気が変わる余地を残してほしい。変えられない予測より、自分で直せる理解のほうが役に立ちます。

Keep exploring

気づく手がかりは四つ。気持ちが決まるまでにも段階がある。そして、次にどうするかを本人が導ける。それがIntentです。詳しくは、このページのIntentの記事へ。次はSituation Signals。同じ願いでも、身体や周囲、使える端末が変われば、必要な助けはどう変わるのでしょう。

A diner looks back and forth between two dishes while the host waits without taking an order.
見比べていることは、選んだことではありません。気の利く店主は比較を差し出し、勝手に注文しません。

いつもの店で

気の利く店員は、決めつけない

なじみの店で、二つの料理を見比べる。メニューを閉じて、また開く。店員はその様子に気づいても、代わりに決めません。ソースについてひと言尋ねると助かるかもしれないし、少し静かに待ってもらうほうがよいかもしれません。

「今日は軽めに。30分後には出たいんです」と伝えれば、言葉が明確な手がかりになります。メニューの前で迷っているなら、行動が手がかりです。どちらも、それだけで注文が確定したことにはなりません。

デジタルでも同じです。二つの商品ページを行き来するのは、料理を見比べることに似ています。比較を頼むのは、ソースについて尋ねることに似ています。メニューを閉じたら注文の準備ができたのかもしれません。それでも店員は最後に注文を確認します。購入の前にも、その確認が必要です。

中心となる区別

三つの問いを、分けて考える

1. どうやって気づいたか?

本人が言ったのか、いまの行動に表れたのか、習慣や周りの状況から推し量ったのか。どこから手がかりが来たかを表すのが、気づく経路です。

2. どこまで固まっているか?

まだ案がないのか、探しているのか、比較中なのか、もう選んだのか。手がかりだけで本人の決心は分かりません。

3. どの高さで語られているか?

目的なのか、条件なのか、やることなのか、ひとつの手順なのか。AI は自分で下の段へ降りてかまいません。上の段へ上がるときは、本人に聞きます。

パスタを見つめていても、注文したことにはなりません。商品ページを見ても、購入に同意したことにはなりません。

手がかりが届く四つの経路

この四つは、どこから手がかりが来たかを示します。言われた(明示)、見せてくれた(いまの行動)、推し量った(習慣・周囲)の三通りです。本人の確信の強さや、AIが行動してよい範囲を示すものではありません。

01

言われた|Explicit

話す、入力する、画面で選ぶ。

02

見せてくれた|Active Implicit

現在の操作から、困りごとの可能性に気づく。

03

推し量った|Passive Implicit(習慣)

覚えている習慣を背景として使う。

04

推し量った|Ambient Implicit(周囲)

時刻、場所、接続中の端末などを見る。

気づく経路

手がかりを受け取り、返事を待つ

経路手がかり店での例
言われた|Explicit話す、入力する、画面で選ぶ。「このソースには何が入っていますか?」と聞く → 質問に答える。
見せてくれた|Active Implicit現在の操作から、困りごとの可能性に気づく。二つの料理を何度も見比べる → 比較を提案する。
推し量った|Passive Implicit(習慣)覚えている習慣を背景として使う。いつも手早い昼食を選ぶ → その候補を用意しておく。
推し量った|Ambient Implicit(周囲)時刻、場所、接続中の端末などを見る。会議まで時間が少ない → 提案を短くする。

いつもの習慣が、今日も当てはまるとは限りません。迷って見えるのも、興味があるからか、決めかねているからか、ただ時間が欲しいからかもしれません。小さく閉じられる提案を出し、返事を受けて考え直せるようにします。

決定までの道のり

かなえたいことは、どこまで固まっているか

決心の状態は仮の理解であり、本人がいつでも直せます。同じ経路から届いた手がかりでも、決心の段階は違います。

段階店での様子デジタルでの手助け
Latent|まだ思いついていない別の料理という案自体を、まだ考えていない。可能性として尋ねる。興味がなければ、それで終える。
Exploratory|探しているメニューを読み、選択肢を知ろうとしている。少数の候補と、役立つ違いを見せる。
Deliberating|比較している二つの料理に戻り、材料を尋ねる。横に並べて比べる。選択はまだ開いておく。
Confirmed|決めた料理名を伝え、注文を頼む。実行内容を見せ、確定する行動には必要な承認を求める。

話しかけていても、まだ探していることはあります。「このソースは何ですか?」は明示的な質問ですが、料理を決めた合図ではありません。逆に、無言でメニューを閉じたら決めたように見えるかもしれません。それでも注文は確認します。

願いの高さ

目的、条件、やること、手順

同じ願いでも、語られる高さはさまざまです。「会議の前に、ちゃんと食事をしたい」は目的です。「軽めで、30分で出たい」は条件を加えています。料理を選んで注文するのがやること、ソースについて尋ねるのがひとつの手順です。

高さ店での例AI と作るときの例
目的会議の前に、ちゃんと食事をしたい。一年後も、自分ひとりで手を入れられるスライダーにしたい。
条件軽めで、予算内で、30分で出たい。依存を増やさない。いまのデザインは保つ。
やること料理を選んで注文する。スライダーを直す。
手順ソースの中身を尋ねる。ドラッグの処理を直し、テストを流す。

AI は自分で下の段へ降りてかまいません。「スライダーを直して」から、そのための手順を組み立てるのは AI の仕事です。上の段へ上がるのは別の話です。目的を変えたり、条件をゆるめたりするのは本人が決めることなので、AI は聞きます。そして、本人が頼んでもいない技術の細部へ、本人を引きずり込むことはしません。

Intent かどうかは、長さでは決まりません。30分で店を出たいのも Intent ですし、一年後も保守できるコードにしたいのも Intent です。どちらも、どう気づいたか、どこまで固まっているか、どの高さで語られたかで読みます。

見返すための図

言葉か観察か × 決めている途中か決めたか

この二行二列は、ここまでの話を短くまとめたものです。四つの経路を「言葉/観察」に、四つの段階を「決めている途中/決めた」に縮めています。理解のための図であり、詳しい分類の代わりではありません。

決めている途中決めた
言葉「ソースには何が入っていますか?」答える。注文はしない。「パスタにします」。内容を確認して注文へ。
観察料理を見比べる。比較を提案するか、待つ。メニューを閉じる。注文の準備ができたか尋ねる。

体験への落とし込み

決心の段階に合う手助けを

探す

見て、閉じられる候補を出す。比較する道具は渡しても、勝手に結論を出さない。

比べる

提案の根拠を見せ、直しやすくする。「会議は来週です」と言われたら、自然に案を変える。

確定する

商品、金額、相手、結果を見せる。調べることと買うことは別です。別途、範囲を定めて任されていない限り、用意した注文は承認を待ちます。

設計する人へ

仕組みの区別も、保つ

Coordinator は、利用が許された本人や家族などの Brain にある情報を合わせ、仮の提案にできます。何を根拠にしたか、何が不確かかを見せることが大切です。確信度は解釈の確かさを表すもので、同意ではありません。数値が高いだけでは、購入の許可になりません。

既存の Intent モデルには、awareness_depth の Stated/Inferred/Latent もあります。これは願いが言葉になったか、読み取られたか、まだ生まれていないかを問う分類です。上の四段階は、本人が決定にどれほど近いかを問います。関係はありますが、同じ項目でも一対一の対応でもありません。まだ願いになっていない可能性は、まず提案し、本人と確かめてから進めます。

次の章へ

よい始まりは、次の問いを残しておく

Intent は、かなえたいことの可能性を捉えます。Signals は、いまの状況を読む助けになります。Dials は、何を共有し、どこまで任せるかを本人が決めるためのものです。三つを合わせれば、決定を奪わずに手を差し伸べられます。