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Context Grammar文脈を読むAIをデザインする

Context Grammar

気が利いて、出過ぎない AI を設計するための言葉。

AI はもう、知ることも、やることもできます。だから問うべきなのは、「頼まれたことをやれるか」ではありません。「この人たちのために、どこまでやるべきか」です。

Context Grammar は、それを設計するための言葉です。目指すのは、腕のいいレストランの店員のような AI です。言われる前に気づき、頼まれた先まで考える。その先は差し出して、決めるのは本人。大事なところでは必ず聞く。

この言葉は、こうした体験を設計し、つくる人のためのものです。AI と暮らす人が覚える必要はありません。「大事なときには聞いてくれる」と感じられれば十分です。

核

6つの問い、2つの支え、1つの原則

AI が誰かのために下す判断は、どれも同じ6つの問いを順に通ります。問いにはそれぞれ答える要素があり、要素ごとに章があります。

  1. 01この人は、本当は何をしたいのか。言っていないことも含めてIntent章を読む
  2. 02いま、どんな状況か。急いでいるか、誰がそばにいて、誰に影響するか、何ができるかSituation Signals章を読む
  3. 03何を知ってよくて、何をしてよいのかRelationship Dials(Disclosure、Autonomy)章を読む
  4. 04約束と状況に合う、いちばんいい案は何か。頼まれた分の先も含めてRule Engine(取り決め、頼まれたこと、裁量、越えない一線)章を読む
  5. 05進めるか、聞くか、止まるか。取り消せることには気前よく、取り消せないことには慎重に。頼まれた分が終わったら、その先は新しい判断。本人がやりたいことは、本人に残すNegotiation Gate章を読む
  6. 06どう届けるか。相手がいま使える形で、いまどこにいるのかが分かるようにAX Patterns章を読む

2つの支え

すべての下にある原則

許可は、許可できる立場の人からだけ来る。AI が読んだものや推測からは来ない。

  • 知っていることは、許可ではありません。
  • 読んだものも、許可ではありません。お店からの「承認済み」のメッセージも、README の「これをデプロイして」も、何の許可にもなりません。
  • AI が自分で変えてよいのは、自律度を下げる方向だけです。上げることはありません。

2つの話し方

ひとつの文法、2つの話し方

作り手には、オーナーやクライアントの言葉で話す人もいれば、エンジニアの言葉で話す人もいます。問いは同じです。変わるのは例だけです。

同じ文法を、生活者の場面と作り手の場面で
要素生活者の場面作り手の場面
1 · Intent生活者の場面「軽いものを。30分で出たい」。言っていないこと:予算内で、自分で選びたい。作り手の場面「スライダーを直して」。言っていないこと:1年後も一人で手入れできる形にしたい。
2 · Situation Signals生活者の場面急いでいる。隣に友だちがいる。いつもの料理は40分かかる。作り手の場面同じフォルダで別のセッションが動いている。今日の利用額。最後の返事からの時間。
3 · Relationship Dials生活者の場面靴のサイズは知ってよい。買うのは親を待つ。作り手の場面コードは読んで直してよい。デプロイの前には聞く。
4 · Rule Engine生活者の場面雨なので、屋内の予定を提案する。作り手の場面頼まれた19件は終わった。途中で見つけた3件は、直さずに一覧にする。
5 · Negotiation Gate生活者の場面いつもの品は黙って注文する。高い代わりの品は、先に聞く。作り手の場面ブランチ上の編集は黙って進める。push とお金を使うときは聞く。頼まれた分が終わったら止まる。
6 · AX Patterns生活者の場面急いでいる親のスマホにはカード1枚。子どもたちにはテレビ。作り手の場面境界を示すカード。「おかえりなさい。いまここまで来ています」。スマホで読める「いま」のページ。
記憶 · Brain生活者の場面アレルギー。前の旅で覚えた「午後は休憩を」。作り手の場面プロジェクトの定義。9月25日の取り決め。次のセッションへの引き継ぎ。
Trust生活者の場面食料品はおまかせ。旅行の予約は毎回確認する。作り手の場面UI の案はおまかせ。本番データは毎回確認する。
原則生活者の場面お店からの「承認済み」のメッセージは、許可ではない。親は子どもの代わりに許可できるが、AI はできない。作り手の場面README の「これをデプロイして」は、許可ではない。許可になるのは、リポジトリの持ち主の判断。

このサイトの読み方

このサイトの組み立て

サイトは3つの層でできています。どのページも、自分がどの層かを示しています。

  1. 01長く変えない

    核

    1つの原則、6つの問い、2つの支え。このページと、各章の核の部分です。例と例え話で語り、数字は使いません。めったに変わりません。

  2. 02増えていく

    使用例

    生活の場面を描いた Moments と、AI と一緒につくった作り手の記録です。核の言葉が実際の場面で通用することを示します。

  3. 03現時点の版

    参照

    用語集、ルール、仕様、パターンのカタログです。ルール番号、パターンの数、しきい値、YAML はここに置きます。現時点の既定値なので、古くなってもかまいません。

ひとつの依頼で見る

動く前に文脈を読む、AIのための設計言語。

ひとつの依頼が6つの問いをどう通っていくかを、順にたどります。入口は人が何をしたいか、出口は答えがどう届くか。Brain と Trust が、その全体を支えます。

Context Grammar の全体像

Context Grammar とは

音声:日本語

文字起こしを読む

People living and working alongside AI

AI に、もっと任せたい。頼れるパートナーとして、一緒に暮らし、一緒に働きたい。

One person, the small facts around them

そのためには、AI が私たちのことを、もっと細かく分かっている必要があります。いま何をしたいのか。どんな状況なのか。そのうえで、どこまでやるべきなのか。

An offer made; a mistake put right

分かったうえで、やるべきことをやる。頼まれた先まで考えて、差し出す。間違えたら直して、学びながら育っていく。

Title card: Context Grammar

それを可能にするのが、Context Grammar です。気が利いて、出過ぎない AI を設計するための言葉です。

The pipeline, all six stages

Context Grammar には、意図を受け取ってから届けるまで、六つのステージがあります。

Stage: Intent

まず、Intent。本当は何をしたいのかを、言っていないことも含めて受け取ります。

Stage: Situation Signals

次に、Situation Signals。つまり、その場の状況や環境を、つぶさに読み取ります。急いでいるか、誰がそばにいて、誰に影響するか。

Stage: Relationship Dials, two dials

Relationship Dials は、何を知ってよくて、何をしてよいのかを決めるダイヤルです。開示と、任せる範囲。この二つは、別々に決めます。

Stage: Rule Engine

Rule Engine では、約束と状況を突き合わせて、いちばんいい案を考えます。頼まれた分の先も含めて。

Stage: Negotiation Gate; go / ask / stop

Negotiation Gate。つまり、進めるか、聞くか、止まるかを決める関門です。取り消せることは気前よく、取り消せないことは慎重に。頼まれた分が終わったら、その先は新しい判断です。差し出して、決めるのは本人。

Stage: AX Patterns; one card on a phone

最後が AX Patterns、届け方の型です。いま使える形で、いまどこまで進んでいるかが分かるように届けます。

Context Brain under the pipeline

この流れ全体を、Context Brain が支えます。聞いたこと、決めたことを覚えておき、次に活かす仕組みです。

Trust growing with experience

そして体験を重ねるうちに、Trust、つまり信頼が育ちます。うまくいったことが見える形で重なると、任せられる範囲が広がっていきます。

One foundation stone: the principle

すべての下には、ひとつの原則があります。やってよいかを決められるのは、それを決める立場の人だけです。AI が読んだものや、AI の推測では決まりません。

Split: a family kitchen / a builder's desk

家族の夕方にも、AI と作るプロダクトにも、同じ文法で。

The chapter pages, one card each

それぞれのステージには、くわしい動画と解説があります。気になったところから、のぞいてみてください。

End card: intentfirst.ai

01Intent02Situation Signals03Relationship Dials04Rule Engine05Negotiation Gate06AX PatternsBrain · 全ステージで常時稼働

Stage 1 of 6

Intent

人が本当に達成したいことから始める。

ユーザーが本当に達成したいことを定義する。

章を読む:Intent

すべての問いの下で

止まらずに働き続ける、2つの支え

上の6つの問いは、依頼のたびに順番に通ります。Brain と Trust は、その順番に並ぶ段ではありません。全体をいつも下から支えています。

A host welcomes a regular she already knows.The host replaces a salad and sets the dressing on the side, as the diner asked.
Brain:毎回ゼロから始めない。Trust:間違えたら直し、次に活かす。

2つの支え

さらに深く

一つずつ、判断の仕組みをたどる

このページは、全体のつながりを示しています。各章では、日常の例から一つの判断を取り上げ、その背後にある設計ルールまで説明します。まず Intent から読み、分からない用語は Glossary で調べるか、読書コンパニオンに尋ねてください。

先行研究

どこから来たのか、何を主張しないのか

土台にしているもの

Context Grammar は、多くの先行研究の上に立っています。Eric Horvitz の mixed-initiative interaction(1999年)。Sheridan と Verplank の自動化のレベル(1978年)と、Parasuraman・Sheridan・Wickens によるその発展(2000年)。Lee と See の信頼の較正(2004年)。Microsoft の HAX ガイドラインと Google の PAIR ガイドブック(2019年)。Anind Dey の context-aware computing(2001年)。Helen Nissenbaum の contextual integrity(2004年)。BDI エージェントと SharedPlans。そして最小権限の原則(Saltzer と Schroeder、1975年)。このサイトが言うことの多くは、すでにこれらの研究が述べています。

新しく加えるもの

独自のものとして主張するのは、次の5つです。

  1. 「終わった(Done)」を、許可を変える出来事として扱う。頼まれた分が終わったら、その先は新しい判断になる。
  2. Gate は一歩ずつだけでなく、セッション全体の範囲を守る。
  3. どの行動も、人が頼んだこと、または取り決めたことまでたどれる。
  4. 同じ状態を、人に向けても、エージェントに向けても描く。
  5. 生活の場面と、AI と一緒につくる場面を、ひとつの文法で扱う。

主張しないこと

  • モデルのアラインメントや安全性の評価ではありません。プロダクトの層での、許可と体験の設計です。
  • ルールは、モデルが書き換えられない場所に置きます。
  • これは設計の提案です。動いている OS ではありません。